バイナリーオプションで上司を救った模範青年のお話

「すまない、みんな。とうとうこの店も閉店することになった。これはわずかだが、最後の給料だ。どうか受け取ってくれ」
店員たちを前にして、初老の店主は重々しい口調で述べた。5名ほどの店員たちは、厳しい経営状況を知っているため、何も言い返そうとはしない。机の上の給料袋を受け取ると、一人ずつ、頭を深々と下げて部屋を後にした。
「さて、これからどうするか……」
そう呟く店主の手を、妻が握った。
「あなた、たとえどうなろうと、私たちは一緒よ」
「ああ、わかってる……」
二人は顔を見合わせ、お互いに何かを悟った。
その時である。店員のうちの一人が駆け戻ってきて、机の上に厚い封筒を差し出した。
「店長、奥さん、ちょっと待ってください。これ、バイナリーオプションで稼いだお金です。どうか使ってください」
「なんだ君、どうして戻ってきたんだ! それに、バイナリーオプションだって? ……なんだこれは、とんでもない大金じゃないか! これさえあれば私たちは助かる! だが、どうやって手に入れたんだ?」
「ですから、バイナリーオプションですよ。今インターネットで話題になっている、新しい投資の方法なんです。僕もバイトの合間にやっていたんですが、思った以上に利益が出たんです。どうせお金を持っていても無駄遣いしてしまいますから、お二人で使ってください」
「それはありがたいが……本当にいいのかね? それに、バイナリーオプションとは一体なんなんだ」
「ええと、これを見てください」
元店員の青年はスマートフォンの取引画面を示した。世界各国の通貨と思われる、さまざまな記号が並んでいる。
「こうやって取引するんですよ。為替が上がるか下がるか予想して、それが的中したら利益になるんです」
「そんなに簡単に? ならば私にもできそうだ! そうだ、もう一回店を始めることだってできる!」
「良かったじゃない、あなた! 早速始めましょう!」
喜ぶ夫婦を前にして、青年も微笑んだ。店の再建に必要な資金を得るのは、そう簡単なことではない。だが、バイナリーオプションと出会ったことで、夫婦の前途には明るい光がさし込んでいた。

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